インプロの学びを実生活に活かすコツ

インプロアカデミーはインプロを学ぶスクールですが、同時に人生について学ぶ場所でもあると思っています。なぜなら人生もまた即興であり、そして演劇のようなものだからです。

また、インプロアカデミーではインプロの学びを実生活に活かすことをおすすめしています。僕自身それによって人生が豊かになったと感じていますし、人生が変わらないとインプロもどこかで行き詰まると感じているからです。

クラス参加者の中には、インプロの学びを実生活に活かして文字通り人生が変わった人がいます。一方で、なかなかインプロの学びを実生活に活かせない人もいます。両者にはどのような違いがあるのでしょうか?

この記事では、インプロの学びを実生活に活かすコツについて書いていきます。

1. 活かすために考える

まず前提として、インプロの学びを実生活に活かす方向で考える必要があります。これは当たり前のようですが、人によっては「いかに実生活に活かせないか(Yes, but)」を一生懸命考える人もいます。

「まわりが受け入れてくれるか分からないから」
「これまでやったことがないから」
「自分はそういうタイプじゃないから」

キース・ジョンストンは「大人は何事も起こさない天才である」と皮肉を込めて言っています。変化を恐れる人は、自分が変わらない理由をそれこそ創造的に考え出します。しかし、どれだけそれを思いついたところで変わらない毎日が続くだけです。

インプロの学びを実生活に活かせる人は、「どうやったら活かせるか(Yes, and)」を創造的に考えます。もちろんその全てがうまくいくわけではありませんが、少なくとも変わる可能性が生まれます。

2. 創り出したい未来で考える

続いてのコツは、創り出したい未来で考えるというものです。参加者の中には「こうなったら嫌だな」という起きてほしくない未来でインプロの活かし方を考える人もいます。

実生活の中では起きてほしくない未来を考えて、そのために手を打つくことも必要でしょう。セキュリティーの専門家は日々そのことを考えているでしょうし、小さな子どもを持つ親御さんも子どもの安全を守るためにそんなことを考えているかもしれません。

しかし、インプロは変化を起こさないための学びではなく、変化を起こすための学びです。そのため、何かを起こさないためにはあまり活かすことができません。反対に、「どのような変化を起こしたいか?」を考えるときには役に立つことがたくさんあるでしょう。

3. 相手のために考える

第3のコツは、相手のために考えることです。インプロの場はとても自由なため、インプロを学びはじめた多くの人は「実生活でもこの自由を得たい」と考えます。

しかし、実際にそれが許されるかどうかは相手や場次第です。そのため、自由になろうとしてうまくいかないと「やっぱりインプロと実生活は違うんだ」となったり、場合によっては「うちの会社は間違っている」と戦い始めたりしてしまいます(逆効果)。

そんなときに僕がおすすめするのは、インプロの学びを相手のために活かすことです。例えばあなたが自由の喜びを知ったなら、相手を自由にするために何ができるでしょうか?自分が自由になるための試みは相手や場によって左右されますが、相手を自由にするための試みは自分次第でどれだけでもチャレンジできます。

また、自分のために行動を起こすよりも、相手のために行動を起こすほうが人は勇気を出せるものだと僕は思います。

4. 実験として考える

最後のコツは、実験として考えるというものです。参加者の中には「こういう時にはどうしたらいいですか?」と聞いてくる人がいます。こういった質問自体は悪いものではないですし、僕もインプロの視点から答えますが、最終的な答えは「やってみないと分からない」です。

その答えを聞いて、変化を起こせる人は「ではやってみよう」と考えます。それに対して、変わらない人は「正解が分からないならやめておこう」と考えます。

しかし、そもそも人間関係には正解などありません。正解が分からないからやってみないとなると、いつまでたっても行動を起こせなくなります。そんなときに必要なのは実験精神です。やってみてうまくいったらラッキーだし、うまくいかなかったらそのことも受け入れてまた前に進んでいく、そんな精神です。

インプロの基本的な世界観は「世界はカオス」です。そして、思い通りにいかないことを面白がることが大事です。人生も同じように考えてみたら何が起こるでしょう?

まとめ

以上、インプロの学びを実生活に活かすコツについて書いてきました。興味深いのは、これらは全てインプロ自体の考え方でもあるということです。

したがって、インプロの学びを実生活で活かす究極のコツは「実生活でもインプロしよう」ということかもしれません。

逆に言えば、インプロの学びを実生活に活かせないということは、実生活ではインプロができていないということかもしれません。

インプロの学びは、頭で理解することはそれほど難しいことではありません。しかし身体で実現するためには、繰り返しやっていく必要があります。だから継続的に学んでいくことが大事なのです。

インプロって、面白いものですね。それではまたクラスでお会いしましょう!

東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は、海外を含む100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において1000回を超えるワークショップを開催している。NHK『あさイチ』出演。共著書『インプロ教育の探究』
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