アジャイルコーチから見る「インプロの可能性」~おしげさんインタビュー~

過去にインプロアカデミーのクラスにご参加いただいた方に感想をお伺いする受講者インタビュー!今回はアジャイルコーチのおしげさんにインタビューをしました。アジャイルとインプロの似ているところは?インプロからアジャイルが学べることは?ちょっとディープな話をたくさん聞くことができました!
《インタビュワー(太文字):もりじゅん》

おしげ
福島県出身。農家の長男として大自然の中ですくすく育つ。 その後、大学院まで農業を研究するも、卒業後は農業をすっぱり諦めてプログラマに転身。 プログラマの仲間たちとアジャイル開発者コミュニティでワイワイしてたら、インプロを紹介され勢いで参加。 理想とするプログラミングとインプロに共通項があることに衝撃を受ける!!(今ここ) これからは、インプロとアジャイルの架け橋的な人になるべく、アジャイル界隈のすごい人達に宣伝中。 そんな仲間たちと、とにかく前向きになるラジオをやっていますので、興味があればご視聴ください!! (https://open.spotify.com/show/1rIQONU0irej657dhTs6eT

早速いってみましょう!

インプロに興味をもったきっかけを教えてください

それがね、わからないんですよ(笑)でも、原体験は確かにあって。

RSGTにインプロアカデミー代表の内海さんがレトロスペクティブ(振り返り)をインプロを使ってやるということで登壇していたんですよ。その後にインプロについて説明してくれる場もあって、仲間内で聴きにいきました。

その時にワンワード(インプロのゲーム)も実際に体験しました。全部で4回やったんですけど、初めは皆それぞれ好きなことを言ってまとまりがなかったんです。ただ、3周目くらいでゲームをやっていく上での見る方向が同じになってきて、4周目で前の人から言葉を受け取り、話を繋げるワードを言うことができるようになって。

その時内海さんも「これがいい感じのインプロ(なんだよ)」と言っていて、これ大事なんだろうなと思った。何かよくわからないけど、体験した方がいいなと思ってアカデミーのクラスに通うことにしました。

職場では振り返りという活動をやろうと思った時に、反省会になったりダメだし会になったりして結構いやがる人もいます。逆に上手くいってるけどマンネリ化して、定型化した答えしか出ないことに悩む人もいるんですよね。

それを打開しようと思ったときに、別の振り返りのフレームワーク・テクニックを持ってくることも可能なんだけど、そもそものコンテキストを合わせる、チームとして共通の土台にのって喋る方がうまくいく気がして。インプロはそこにミートしてる気がしました。

コンテキストを合わせるって、属人的なんですよ。でもインプロを見た時に、そこの解像度を上げてプラクティカル(実用的)にできているような気がしたんですよ。そこが、アジャイルと相性のいいところなのかなと思います。

アジャイルや振り返りにはすでにいろんな方法があると思いますが、それだと足りないなと感じているということですか?

そうですね。

振り返りの本って結構たくさん出ているのですが、安心感を持ってダメなことを言えることにする、とか土台の部分についてはまだあんまり語られていないですよ。逆にシステムコーチングはコンテキストをあわせる、課題の解像度を上げるためにいろんなワードを定義しています。でも、これはこれで結構重厚長大感があり固い印象を受けますよね。

そうではなく、一発解決社長(インプロのゲーム)をやると、エッジ(壁)に足がかかり、「システムコーチングと同じようなことが起こるんじゃん」という感じになるといいというか。理論を知らなくても実質的にそれに近いことができるなら現場として嬉しいじゃないですか。手軽で誰でもできるやり方、効果があるやり方であると嬉しい。その一つの解がインプロだと感じています。自分の周りでインプロに興味を持っている人も同じ感覚だとおもいます。

実際インプロのクラスを受けてどんな学びがありましたか?

2ヵ月じゃわからなかったです。(笑)

学んでいく上で何回か引っかかるところはありました。相手を引き出そうとした時に僕は何をしたいんだろうと疑問が湧きました。相手を引き出して、一緒のものを見ようとしてるんだけど、そう思ってることが伝わらないとか。自分が思っていることをどうやって(表現として)すっと出すんだろうということとか。いろんな壁があって…。

そういう壁と上手く付き合いながらメンバーと方向性を合わすってどうやるのか(試行錯誤していく)という目標は見えたには見えたけど、2ヵ月じゃ全然まだ違うなあ、足りないなあと思いました。

もちろん、(インプロの)どの段階でもこれで満足というのはなくて、(次はこれ、次はこれといった)動的な並行の状態だと思うけど、自分の中ですっと(インプロの学びを)出せるには足りないですね。わかんないけどそれがうまく出せるようになると、場作りとかすごくよくなるんだろうなあという気がしますね。

インプロの学びを出すってどんなイメージなんですか?

メンバーの本音を引き出す一言とか、場の構造とか空気が良くない方向に進んだ時に、一掃させるためのゲームを持ってくるとかですかね。

普段、いろんな感情や思いを見えない見ないようにしているだけで、本当は沢山あると思うんです。仕事してても「この仕事つまんない」とか、「そういう言い方されるとやりたいこともやりたくなくなる」とか。それをみんなの場で共有しておいた方が、本当はいいと思うんです。

アジャイルはソフトウェア開発をするので、人が楽しんでいるかで生産性が全然違って。「仕事だからしょうがない」で進むほど簡単じゃないですよね。時間をかけて体動かしてれば進むものではなく、やりたい人・好きな人が突き詰めて勝手にやっていく世界です。

だからこそ、個人が力を発揮できるように、不満や悩みを出来る限り出して、無いものにしないで進んでいった方がいいと思ってて、それをファシリテートしたり確認しながら出せるような場にするための技として、インプロを使えたらよかったなって感じです。

この考え方が、インプロではすごくシンプルに体現されてるなと思ってるんです。

実際のクラスでも、自分はこんなに相手がいったことを否定していると思ってなかったとか、寄り添ってるつもりで全然相手のことを見てない、無意識の癖に陥っていることが分かりましたし驚きでしたね。相手のやりたいことがあるのが分かってるのにそれを全部刈り取って自分のやりたいことをのせてたこともありました。

こういうことを自分の中でいつでも引き出せるようになってて、ふっと必要な場で大切なことを思い出せるミニゲームとか使えるようになると重宝されるように思います。

アジャイルに限らず、職場の構造、空気感が悩みを言い出せない雰囲気になっていた時に、誰が悪いとかじゃなく、状況を一掃できるようなミニゲームやプラクティスがあったりすると良いと思いますよ。インプロのゲーム100個という本が出たらすごい面白いと思う。

ゲーム集だけあっても形骸化しちゃうって考えもありますよね。自分で収録・出演しているラジオでインプロをやった時と、内海さんとやった時と質感が違いました。内海さんとやった時はやたらと艶っぽくて…何か知ってるからなんだろうなあ。終わった後の一言かもしれないし、その場の空気感かもしれないけど。

インプロのファシリテートを学ぶのもいいかもしれないですね。

めちゃくちゃいいと思う!

インプロって、これとこれができてるからインプロができているっていう感じじゃないと思うんです。これとこれの繋がり、関係性、流れとかの行間にあるものを感じられる人がインプロをうまく感じられている人だと思う。

スクラムマスターも同じで、すごく素敵だな、この人いいなと思うスクラムマスターって、これができてるとかじゃなくて、何かいい想いがある、センスがある、感度がある人だなと思ってて。

ものとものとの間にあるものを感じられるところに親和性があると思います。同じものを違う角度から見ているのかも。もしかすると喋る言葉が違うだけでまったく同じものを見ている可能性すらありますね。

インプロのマインド以上に、ファシリテーターがどこを見ているのかがアジャイルの人にとって面白いのかもしれないですね。

面白いと思います。

例えば、立場を入れ替えてやってみるとか。あんまりインプロの知識がないアジャイルコーチがインプロのディレクションをやって、終わった後振り返りをする。開発では、振り返りみたいなのをインプロバイザーがファシリテートして、気づいたたこととか詰まってそうだと思うことをシェアしてみるとか、面白そうじゃないですか。

まさに、内海さんとアジャイルコーチのRyoさんがフィアレスでやってることなんですかね。すごく上手くいったって言ってましたよ。「結局同じじゃん」みたいな。

あと、振り返りとは別の視点で、チーム形成のために日常的にで使っていく感じでアジャイルにインプロ取り入れられそうだなと思っているんです。

アジャイル業界ではリフトオフと言って、チーム立ち上げのために半日くらいかけてそれぞれ自分のことを話したり、チームビルディングのためのワークをする時間があるんです。このリフトオフができるとチームががっと立ち上がれるんです。

でもたまに、既にあるチームに途中から入ってほしいとか、急遽アサインされたメンバーで2週間ごとにプロダクト作ってください、みたいな形で依頼されることがあるんです。

こんな感じで走りながらチームを形成していくのに、インプロでやったことを日々入れ込んでいくと上手くいくんじゃないかと思ってて。リフトオフできなくても1日15分ワンワードできたら言葉にならないものを感じ取れるんじゃないか。日々のミーティングでやっていると、気が付けば仲良くなってません?みたいにできないかなと思ってるんですよね。

フィアレスで研修したお客さんが、ワークを会議の前にやると良い雰囲気になるという感想をいただいたことがあります。

会議始まって最初の1分とかって結構重要で、雑談とかするんですよ僕。1、2分雑談して本題に入る、一旦場をフラットにしてゆるいところから始めようよとか、自分は安全な人というのをアピールしてるんです。

いつもぴりつく会議の最初にミニワークをやるとか、大事な経営会議の前に解決社長ができたら面白いですよね?そうやって最初リフトアップできなかったチームでも、どんどんチーミングができていくと言う風に持っていけたらすごい面白いなあと思います。

連想ゲームとかも、無意識で今開発で上手く行ってないこととか出そうですよね。心理的安全性を上げたり、不安感を下げることをプラクティスの中でやってみたいですね。

インプロはどんな人におすすめしたいですか?

そうですね・・・。普通の人かな、その辺の普通の人。

普通の人って考えてることって面白くないですか?普通の人でうまく表現できてない人が表現した時ってすごく面白いし、そもそも普通の人っていないですよね。

演劇やってる人は思ってることも踏まえてうまく表現できる人だと思ってて。人の前で喋る人ような人は自分の想いを殺しながらもうまくいいとこだけ喋れる人だと思っています。

でも、そうじゃなくて自分が思ってること無意識的に抑圧してて、しかもそれをうまく話す場もないみたいな人が、それを取っ払って「自分ってこんなことを思ってて」と話した時はすごく面白いと思うんです。

今回のクラスは表現がめっちゃ上手な人が結局1/3以上いたと感じていて、それに引っ張られて表現できるようになったりするんです。それもまた楽しいですよね。出しづらいんだけど徐々に出していけるようになる、自分の中でも出していいのかなという葛藤がありながらも進んでいく中で出せるようになっていったなと思います。

zoomのクラスだと自宅で受けるので、家族といつもより楽しそうとかいつもと違う声が出ててどうしたのと言われて説明する機会にもなりましたね。

自分は普通だと思ってる人、自分なんか、表現に興味がないと思ってる人が受けに来るのが面白いのではないでしょうか。

インプロアカデミーでは多種多様なバックグラウンドの方がクラスに参加しています。このインタビューを読んでインプロを学ぶことに興味を持ってくださった方は、ぜひ一度クラスページをご覧ください。→クラス一覧

大学にてミュージカルや演劇活動をスタート。会社員時代に出会ったインプロに教育的価値を感じ、独立後、個人で活動しているインプロバイザー(パフォーマー・芸術家)を支援する活動をしながら、インプロ団体の経営に参画。
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