どーも、インプロアカデミー講師のおしょうです。
僕は今、インプロの父と呼ばれるキース・ジョンストンが創設したカルガリーのLoose Moose Theatreというところでインプロ修行をしています。
そこのディレクター兼プレイヤーであるショーン・キンリーの家に泊まり込み、日中はショーンのクラスを受け、夜はLoose Mooseの稽古に参加し、週末はショーに出演したりスタッフとしてお手伝いをしたりして、インプロ漬けの生活を送っています!
帰国は10月2日になるのですが、その後すぐ、10月7日〜9日に3日間のシェアワークショップを行い、2ヶ月間の経験を凝縮してシェアします。
キース・ジョンストンやショーン・キンリーがどういう人なのかという基本的な話は別の記事に委ねて、この記事では僕がどんなことをシェアしようとしているかという話をより具体的にします。
1. Push yourself! Take a risk!(自分を押し出そう!リスクを負おう!)
ショーンの下でインプロを学ぶまで、僕はインプロの最大のテーマは「自由」だと思っていました。しかしこっちに来てそれが「リスク」に変わりました。
特にキースのインプロはそうだと思います。キースが開発した数々なエクササイズやフォーマットは、プレイヤーにとってリスキーになるように設計されています。キース自身「私は未来を予測できないゲームばかり開発した」「リスクのないインプロショーは観に行く意味がない」と言っています。
だからショーンは、クラスの中で常にプレイヤーにリスクを負うことを求めます。自分がパターンに陥っていることに気付いたら違うことをやったり、安心安全を感じていると感じたら未知に飛び込んでみたり、準備が出来てないまま動き出してみたりするのです。
そしてパフォーマンスやデモンストレーションで、自らそれを実践して見せてくれます。どこに行っても彼が最も経験があるインプロバイザーなのですが、彼が一番遊び心を持って動き回っているのです。常に次の瞬間何をするかわからない彼の姿は、いつ見てもワクワクするし「これが本当に素晴らしいインプロバイザーの姿なんだ…!」と日々感銘を受けています。
僕も13年インプロをやってきて、500ステージにも及ぶ経験を積んできましたが、彼の姿を見てると、全然安全なところでやってたなと思います(笑)
まだ1ヶ月しか経っていませんが、どんなエクササイズやシーンをやっていても求められる(ボードゲーム中でも)ので、段々とその感覚が身についてきている実感があります。むしろリスクがないとムズムズするようになってきました(笑)
この「リスク」については3日間ずっと言い続けることになると思います。どんなところでどのようなリスクを負えるのかを探求し、皆さんも一緒にムズムズしましょう。
2. Take care of yourself! Take care of your partner!(自分をケアしよう!パートナーをケアしよう!)
リスクを負うためには、安全安心を感じることが大切です。だからショーンはリスクと同じくらい「ケア」という言葉を使います。
常に自分の状態やパートナーの状態に気を配り、もし異変が起きていたらケアをしてあげる。例えば、パートナーが言葉の意味がわからずに困っている顔をしたらもう一度説明してあげる、そして自分が同じように困っていたら「どういうこと?」と聞く。お互いがいい時間を過ごすためには、お互いがお互いをケアしておく必要があります。
これもインプロを長くやってる自分としてみれば当たり前のことなのですが、ショーンの求める質や精度はもっと高いところに設定されていました。グループでやっていたらグループ全体がパートナーだし、観てるお客さんがいたらお客さんもパートナーなのです。それら全てをケアし続けることをショーンは求めているのです。
そして「ケア」という言葉自体にあるニュアンスも、日本人の感覚と少し違います。日本人はおそらく「心配する」「気にかける」という受動的な意味で捉えていると思いますが、ショーンの言う「ケア」は「ニーズに応えて提供する」と言う意味を持っています。つまりより能動的な関わりなのです。よりパートナーの気持ちを高めるためにどんな事が出来るのか。いつもと違う「ケア」を探求しましょう。
3. Ask the question of the scene! Answer the question of the scene!(シーンの疑問を聞こう!シーンの疑問に答えよう!)
キース・ジョンストンのストーリーテリングは実にシンプルです。いろんな用語はありますが、最も大切なことは「今必要なことを今やる」ことだと思います。そしてその根幹を担っているのが「シーンの疑問」です。
例えば、母親と息子のシーンで息子が「お父さんは今日遅いの?珍しいね」と言い、母親が「お父さんは今日帰ってこないのよ」と言ったとします。観ているお客さんはここで「なんで?」と思うはずです。しかしプレイヤーが「ふーんそうかあ。ご飯まだ?」「今日はカレーよ」と続けていったとしたらモヤモヤすると思います。なぜならシーンの疑問に答えていないからです。
シーンの疑問がある時、お客さんはそれが気になってしまって、それ以外の話には関心がいきません。しかし恐れのあるプレイヤーはそれを扱わなかったり、先延ばしにしたり、うやむやにしたりします。リスクの話をさっきしましたが、シーンの中で最もリスキーなのは「今必要なことを今やる」ことです。
例えば、さっきの疑問に息子が「なんで?」と聞いたとします。そして母親は「お父さんはこの世にいないのよ」と返します。当然お客さんはまだ「なんで?」となるので息子も「なんで?」と聞きます。母親は「お父さんは私が殺したの」と言って鍋の中身をひっくり返し、そこからお父さんの死体が出てきます…。
と言ったように、シーンの疑問に答えていくと、お客さんの興味関心と一緒にストーリーを進めることが出来ます。
そしてこの「答える」というものにも種類があります。例えば「殺したのよ」だけでも答えてはいますが、そこに死体を見せるという具体的な行動が伴えば、よりお客さんは惹きつけられます。
インプロバイザーとしては、より長くより強くお客さんを惹きつけたい。そのためには「シーンの疑問が何か?」そして「それにどう答えるか」が重要になります。ワークショップでは主にシーンワークを通してこれらを探求していきます。
まとめ
以上が僕が現在までに大きく学んでいるところであり、是非ともシェアしたいと思っている内容です。
ひょっとしたらどれも今まで聞いたことある言葉かもしれませんし、やったことのあるエクササイズを扱うかもしれません。しかし、その扱うレベルや観点は今までと大きく変わることになると思います。そして「キースのインプロにはまだまだ先があるじゃないか!」と叫びたくなると思います。
特にキースのインプロを今までやったことある方にこそ参加してみてほしいです。このワークショップを経ると、少なからずインプロの見方が今までと大きく変わると思います。
現在、ワークショップの枠は半分埋まっているようです。早割は8月中なので早めにお申し込みください!