3日間インプロワークショップにて『MAESTRO™(マエストロ™)』を上演しました!

こんにちは、内海です。9月の3日間インプロワークショップは新しい試みとして、発表会に『MAESTRO™(マエストロ™)』を上演しました。

マエストロはキース・ジョンストンによって開発された対戦型のインプロショーです。10~16人のプレイヤーたちが、ディレクターのもと様々なシーンを即興で行い、その点数を競います。

今回は3日間ワークショップの発表会として、参加者14人+ディレクター内海でこのマエストロを行いました。結果として「有料のショーにしてもよかったのでは?」というくらい、しっかりとしたマエストロを上演することができました。僕はこれまで海外も含めて様々なマエストロを見てきましたが、その中でもかなりいいほうのマエストロだったと思います。

※マエストロの上演にはITI(International Theatresports Institute)からライセンスを取得する必要があります(インプロアカデミーはライセンスを取得しています)。

ワークショップもマエストロ仕様に

今回の3日間ワークショップは、内容もマエストロに向かうためのものになりました。マエストロの公式ガイドには、次のように書かれています。

マエストロでは、他のプレイヤーに対する優しさと人の良さ(good nature)を持って演じるのが最も効果的であること、そして最終的な目的は、バラエティに富んだ魅力的なシーンの思い出を観客に残して楽しいショーを作ることです。

A Guide to Keith Johnstone’s Maestro Impro

僕は今回のマエストロにあたって、これを次のような図式にしました。

参加者が毎日見ていた図

インプロショーでは、まずはプレイヤー同士が「いい関係」であることが前提です。見ていて「心配」な関係になると、出演者がお客さんを楽しませるショーではなく、お客さんが出演者を心配するショーになってしまいます。したがって、少なくとも見ていて「安心」な関係を、できれば「嬉しい」関係になるよう、まずは(そしてずっと)意識していきました。

そしてその上でバラエティー豊かな「いいシーン」をつくることを意識していきました。いい関係があれば、それだけでもマエストロは見られるものになります。しかしそれだと同じような雰囲気・テンポ感のシーンが続くばかりになります。ワークショップではステータスの変化、キャラクター、ストーリーテリングといったインプロのテクニックに扱うことで、シーンのバリエーションを増やしていきました。

とはいえ、全てのシーンがいいシーンである必要はありません。インプロはリスクを取っていくものなので、素晴らしいシーンが生まれることもあれば、しょうもないシーンが生まれることもあります。マエストロというフォーマットの優れているところは、そのようなシーンの出来不出来によって点差が生まれ、ショーが成立するところにあります。

ワークショップではこの図式がかなり有効に働き(「今のシーンはストーリーは無いけど、関係は嬉しかったからOK」「今のシーンは関係が心配になってるから、まずはそこから」など)、結果としていいショーにつながったと思います。

初心者半分、経験者半分の参加者

今回のマエストロがうまくいった理由には、募集枠を工夫することで、全体の参加者のうち半数をショー初心者、半数をショー経験者にしたことも大きく影響しています。マエストロというフォーマットはもともとこのような参加者たちにあわせてつくられました。

マエストロは必要に迫られて生まれました。キースがマエストロを考案したのは、オランダのユトレヒトでインプロクラスの生徒たちと一緒に授業をした後のことです。ワークショップの終わりに彼が必要としていたのは、レベルの異なる大勢の生徒が参加できるフォーマットでした。その夜、キースの指導のもとでマエストロは誕生し、問題は解決されました。

A Guide to Keith Johnstone’s Maestro Impro

初心者ばかりだとマエストロは少し難しいですし、経験者ばかりだとリスクが足りません。今回はその塩梅がちょうどよかったと感じています。

また、ワークショップの中で初心者は経験者に憧れることによって学び、経験者は初心者を輝かせることによって学ぶ、といういい循環もできていたと思います。これはとってもいい文化だと思ったので、今後も半分は初心者、半分は経験者という枠組みでやっていこうと思います。

次回の3日間ワークショップは?

次回の3日間ワークショップは2025年1月11日(土)~13日(月・祝)に行います。

僕は「いいものを作っていく中で全て学ぶことができる」という信念を持っています。3日間ワークショップは今後も「いいマエストロを上演すること」に向かうことで、結果として豊かな学びがある時間にしたいと思っています。

3日間ワークショップはいつも1ヶ月前(早ければ2ヶ月前)には定員になっていますので、ご興味ある方はお早めにお申し込みください。みなさまのご参加をお待ちしています!

東京学芸大学に在学中、高尾隆研究室インプロゼミにてインプロ(即興演劇)を学ぶ。大学卒業後は、海外を含む100を超えるインプロ公演に出演するほか、全国各地において1000回を超えるワークショップを開催している。NHK『あさイチ』出演。共著書『インプロ教育の探究』
LINE登録