こんにちは!事務局のめろです。ゴリラシアターの上演が遂に明日となりました!今日は、講師ではない私の目線から、これまでの稽古についてお話ししてみようと思います。
インプロの稽古ってどんな感じなの?
そもそも、インプロ公演の稽古と言われてイメージを持てる方は少ないのかなと思います。ちなみに私も去年(2020年)の6月くらいに初めて「稽古」と呼ばれるものに参加して理解できたくらいです。
まず、ゴリラシアターはITI(International Theatresports Institute)からライセンスの取得が必要な正式なフォーマットなので、その形を覚えるための練習があります。例えば、MCがここで出てきて、こんな声かけをしたらみんな登場する、などです。このあたりはマエストロやシアスポをはじめとするショーではよくある光景かなと思います。
気になるのはシーンの中身はどうやって稽古するかですよね。インプロアカデミーで開講しているワークショップもショーに向けた稽古でも、必要なワークをする→振り返るという点では同じです。しかし、目的として個人の学びとチームでの学びの割合が変わってくるのかなと思っています。
ワークショップでは、(それが発表会付きであっても)各々の背景やモチベーションで参加しているので、その場で起きたことが全てだったり、自分が持ち帰りたいものを追求するという面が強いです。
しかし、ショーの稽古となると少し変わってきます。このショーでどんなことを表現したいのか。そのためにはどんな要素が必要なのか。そしてそのためにはどんなものを習得する必要があるのか。チームのメンバーで認識を合わせながら同じところを目指していきます。
ゴリラシアターでは「普段のインプロでは見られないより芸術としての公演」を目指しています。(自分で言っててかっこいいな!笑)そのためには、シーンの核を見つけるセンサーや葛藤の中に飛び込む勇気が必要です。シーンを作り、何が核だったのか確認する。核にたどり着けなかったなら、どこで逃したのかを考えやり直すということをくりかえしました。
よりゴリラシアターらしいシーンとは何か。どんな形があるのか、何度も試して自分とチームの中に要素を貯めていく感じです。この稽古を通して、アカデミーメンバーの中に共通認識が沢山できたなと思っています。
パティ・スタイルズ(Patti Stiles)からの稽古
アカデミーのブログやSNSで再三お伝えしていますが、今回のゴリラシアターの上演にあたり、世界的なインプロバイザーのパティから稽古をつけてもらっています。
彼女の分析能力や高いレベルのインプロだったことについては、うつみくんのブログなどで読んでもらうとして、私が特筆したいのは、インプロで大切なことは変わらないということです。
アカデミーの講師は日本では割とインプロ歴が長く、通ってくれる生徒さんや私にとっては「必要なことを学びきった人たち」に見えてしまうこともあるかなと思います。でも、彼らもパティからたくさんたくさん指摘をもらっていました。「今、大事な問題から逃げたね。勇気を持ちましょう」「悪役になることを恐れないで」「ディレクターを驚かせることも大切」などなど。私が散々言われてることを、講師のみんなも指摘されている光景はとても新鮮でした。
インプロ(学び?)は螺旋状になっていると言われることがあります。上がっていくと新しいことに取り組むのではなく、大切なことから離れずに、それを繰り返しながら高みに到達していく。だから、学んでいくと同じような景色を何度も見る。成長してないように見えるけど、それは一段上の学びをしているということだ、と。
この事実を改めて目の当たりにし、これからも大切なことを掘って掘って掘り続けるんだな。一生高みを目指し続けることができるものなんだなと思いました。
私もこの稽古中に、「インプロって先がわかんなくてもとりあえずやってみればいいんだ」ということに気付きました。文章にすると当たり前だし、わかってはいたのですが、少しレベルが上がった「なにをしてもいい」を理解したのです。
インプロには終わりがない。だからこそ、学びたい人が学び続けられる場所を作り続けようと、改めて決意することもできました。
(番外編)パティからの宿題紹介
パティは毎回、次回の稽古までにやってくる宿題をくれました。こちらを少し紹介します。
効率的なディレクションをせよ
ディレクターは最初に場面を設定したり、プレイヤーに役を与えたり、途中で方向性を示したりしていきます。そこで、詳細で長々としたディレクションをしがちでした。
例えば、
家族とは何かというテーマでシーンを作ります。男の人1人と女の人1人ください。シンプルな設定だけあげるので、それでやってください。うつみくんがホームレスのおじさん。さらが女子高生。場所は河川敷です。2人はお互いのことを知っているっていう設定です。大丈夫ですか?では、それでやってみましょう。
といった感じ。
そんな私たちが、もっと端的に、よりプレイヤーに任せることができるように『3語ディレクション』の宿題を貰いました。
やり方は、設定や途中のディレクションを「3語だけで」するというものです。テーマを伝え、指でスタートの人数を示す。その後設定のために使えるのは3語だけということです。
例えば
(設定中)環境問題をやります。指で2を出す。溶ける・氷の・上で。
(シーン中)ホッキョクグマが、見える!
この練習で、ディレクションがかなり端的で効率的なものになりました!
シーン動画をみて、他の可能性を探求せよ
シーンの核をつかむことやそこに向かって一直線に走ることがなかなかできなかった私たち。毎回詳細なnote(フィードバック)で、「ただやるだけでやる意味のないシーンになってしまった」「この言葉を受けて進んでいたら格差について扱えた」といった指摘を貰っていました。
そこでパティは、稽古動画を自分たちでみて、他にどんな可能性があったのかを話し合ってくるよう宿題をくれました。
実際に自分たちで過去の動画を見てみると、プレイヤーとして気負いがない分様々な可能性や落としてしまったワードを見つけたり、ディスカッションする中で自分にはない視点を獲得しあうことができました。
最後の稽古では、パティから「だいぶシーンの核に近づくことができるようになってきたね」とコメントを貰うまでになっています。(近づいてきた、というところがポイントですね!本番でつかむことができるのでしょうか!!)
稽古と自主練でだいぶ成長しています
このブログを書くにあたり、初期の頃の稽古動画を見返しました。どのメンバーも今との落差に驚くばかり。自分たちで実感しているよりも成長しているのかもしれないと感じました。
これが今のインプロアカデミーだと自信を持って、ショーをお届けできると確信しています。どうぞ、皆様の当日のご来場をお待ちしています。
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