役者がインプロを学ぶ意義とは?〜大塚由祈子さんインタビューVo.2〜

インプロアカデミーでは、定期的に「役者さん向けのインプロワークショップ」を開催しています。役者にとってインプロを学ぶとどんな意義があるのかをお伝えするべく、小劇場界でも活躍されているインプロバイザーの大塚由祈子さんにインタビューをしてきました。本日はその後半、Vol.2の内容です。(前半はこちら)

太文字:めろ 黒文字:由祈子さん)

~脚本家・演出家としての視点を養う~

今もインプロを続けている理由はなんですか?

純粋にインプロが楽しいから!というのもありますが、一番は俳優の訓練の一環として得るものが大きいからですね。ちょっとやってみようかな?くらいの気軽な感覚で始めたんですが、ためになることが多すぎて。

特にセカンドサークル(※1)でも探究している、フルレングス・インプロ(※2)と出会って、「これが私のやりたいインプロだ!」となりました。

私のインプロショーデビュー戦は劇団しおむすび(※3)の即興deNight(※4)で、勿論とても楽しかったんですが、短いシーンを創ることには、正直そんなに魅力を感じられなかったんです。

でもフルレングス・インプロに出会って、インプロなのに脚本のある芝居に負けないくらい、下手したら超えられるくらい、「役として物語の世界を生きる」感覚があって。自分が脚本のある芝居をやってきた経験も活かせるだろうし、前半にもお話しした、「予測せずに、その場にいる」という感覚や、脚本に眠っている可能性に気づくセンサーを磨く訓練?修行?(笑)にもなるだろうなと思ったんです。

今もまだその修行中ということですか?

そうですね。まだまだ、本当に奥が深くて。

それに、脚本家・演出家目線での考え方も鍛えられるんですよね。役がどう対立したらストーリーが面白くなるのかとか、そろそろ何か行動・変化が起こった方が良いんじゃないかとか。そうやって色々な角度から物語を捉えつつ即興で創り出していくことが、きっと脚本のある芝居の現場にも生きてくるはずです。

お話を伺っていて、本当に役者さんにおすすめなんだなと感じました。

そうなんですよ~。 やっぱり、脚本のある芝居って基本的には演出家と一緒にやるので。演出がOKならOK、NOならNOだから、以前はつい演出家の顔色を気にしてしまうことが多かったんです。

でもインプロを始めてから、「演出家にOKもらえるかどうか」ではなく、「自分がこの役をどう演じたいか」「自分がどう行動したらシーンが面白くなるか」などを主体的に考えられるようになり、以前よりも稽古の中で、自分の考えを演出家と建設的に擦り合わせていけるようになったと思います。

演出家の指示を待って動くだけの受け身な俳優ではなく、自分の「こうしたら面白いんじゃないか」というアイディアを演出家に提案できる俳優。それは、正解にしがみつかず、「脚本にはいろんな可能性があるんだ」という姿勢で物語と向き合っていないと出来ないことなんだと思います。

以前、出演した脚本のある芝居で、「一言一句違わず、脚本通りにセリフを言ってください」と演出家(脚本家も兼ねていた)から厳しめに言われていたんですね。でも私は、稽古の中でセリフを足したりアレンジしたりして。当時の座組のみんなには「勇者だね」と言われました(笑)

インプロやる前の私だったら、絶対にやらなかったと思います。だって普通に考えて、「一言一句違わず、脚本通りに」って言われてるのに変えちゃうなよ!って話じゃないですか(笑)でも、「このセリフを足したりアレンジした方が絶対に面白くなる!」と直感的にひらめいたときには、とにかく一度は稽古場で試すようにしています。

もちろん、どんなセリフも自由に言いやすいように変えて良い!なんて思っているワケじゃありません。

例えば、「この役、もっとお茶目な感じで演じたいなー」と思っていて、『夢路さん、今のうちにトイレに行ってきて!』というセリフがあったら、『めろりん、トイレに行っといれ☆』にアレンジした方が、その役らしさが出せるかも?みたいな感じで変更しました。

無論言われたルールは大原則守るようにしているんですが、ただ演出家の言いなりになってしまうのではなく、そんな風に自由な姿勢で、稽古の中で演出家と対等な立場で、一緒に作っていくことが、以前より出来るようになったと思います。

セリフの変更は通ったんですか?

通ったんですよ!稽古中に私が提案したものは全部採用していただきました!

だから「一言一句違わずに」というのは、脚本家へのリスペクトを持たず、自分勝手に語尾を変えてしまう、まだ演劇を始めたばかりの人たちに対しての基本的な注意喚起なんじゃないかなと。インプロでいう、「イエス・アンドで、否定せず受け入れて!」みたいなことと同じなんだなと。

その先に、「この方が役が広がるな」「物語が面白くなるな」などと思う箇所があれば、変えるっていう提案をしてもいいと思うんですよね。それを稽古場で試せるようになった自分を褒めてあげたい(笑)成長してるね~って(笑)

真面目度合いが減った?

いや、あくまでも真面目なのは変わらないんですよ。真面目にルールを超えてみる、みたいなことができるようになった。言いなりじゃない真面目。自由な真面目(笑)そう!自由な真面目に進化したんですよ、きっと私は(笑)

~相手から影響を受けて変化する~

一回みんな、インプロアカデミーに通ってくれればいいってことですね(笑)

そういうことですね(笑) そしたら自由な真面目に進化できるよ!と(笑)

脚本のある芝居にメインで出演している人たちは、現場が入るとスケジュールが不規則なので、インプロアカデミーがジムみたいな場所になったらと思います。気軽に通えて、芝居の勘を鍛えたり、自分と・相手と繋がる感覚を鋭くしたりすることができる場所として開かれたらいいなと。

そうそう、「相手と繋がる」感覚は、俳優としてすごく大切ですよね。やっぱり脚本があると、「脚本通りに自分が変化出来なかったらどうしよう」って怖くなって、つい自分で自分をコントロールしてしまいがちだと思います。

相手から影響を受けているフリをしてしまう。影響を受けずに、頭の中で描いている順番で、自分の中で展開して、相手がいようがいまいが、勝手に自分だけで変化しちゃう。でもインプロでは、その場で・その相手とやるしかないので。本当にその場にいて、その場にいる相手を見て、自分がどう感じたか・どんな影響を受けたかに素直に従って変化していく。その感覚を取り戻す、もしくは更に磨いていくトレーニングになると思います。

自覚症状なく、無意識に相手から影響を受けている「つもり」になっている俳優って多いんじゃないかなと。相手から受ける影響だけでやろうとすると、「何も湧いてこないんじゃないか」「変化できないんじゃないか」と怖くなりますから。

ただ、インプロを始めて、相手と一緒にただいるだけで、「自然に湧いてくるじゃん!」みたいな。自分のコントロールを手放して、相手から影響受けるだけで、「意外と心が動くじゃん!」ということに気づけたのは、大きな自信になりました。

俳優って基本的にはオーディションで落とされる側の人間ですから、なかなか自信が持てない、のに、演出家や観客など周りの人たちに素敵だなって思われたくて仕方がない(笑)それにほら、(私は)真面目でしょ?(笑)だからつい、脚本が求めているモノに必ず到達したい!上手くやりたい!と思ってしまうんですよ。そうすると、「相手から十分に影響を受けられなかったらどうしよう」と不安になって、どんどん相手と繋がれなくなってしまう。

これは、「今回初舞台です!」みたいな演技経験の浅い役者さんと共演する現場が多い人達なんかは、絶対クセになってしまっていると思います。技術的に自分で影響を受けているフリをするということが不必要だとは言いません。そういう技術が必要な現場もありますから。残念ながら、私も得意だと思います(笑)怖くなると、つい気を抜いてフリをしちゃう。

でもだからこそ、相手から受ける影響に委ねて、変化していく感覚は、俳優として大切に持っているべきだし、その感覚を安全に磨き、鍛えられるのがインプロなんだと思います。

スポーツ選手だって楽器弾く人だって、毎日ストレッチしたり練習したり、日々鍛錬をしているんだから、俳優だって毎日感覚を柔らかくほぐして、繊細に鋭敏にしておくことが重要だと思います。フリをするクセがついてしまうと、この感覚はすぐ鈍感になってしまいますから。その訓練としても、インプロは本当にオススメですね。

Vol.2 まとめ

インプロを通して、演出家と対等に作品を作っていくことができるようになったとのことでした。また、最後の相手と繋がる感覚を養うことができるというお話は特に役者さんに共感してもらえるだろうと由祈子さんもおっしゃっていました!

インタビューを担当した夢路の想像を遥かに超えて、役者さんがインプロを学ぶ価値を伺うことができました。これからも、多くの人にとって価値のあるアカデミーにしていきたいと思います!

※1 由祈子さんが所属するインプロ団体。1時間の長編を即興で行うライブを定期的に開催している。
※2 ロサンゼルスのインプロシアターが実践している、長編の即興演劇。彼らは「台本のない演劇」と呼んでおり、より真実味があり、物語のある作品を、即興で創ることを探求している。
※3.4 忍翔が以前主宰をして、現在は名誉顧問となっているインプロの劇団(劇団しおむすび)。そこで定期的に行われているインプロ公演。劇団メンバーと客演が混ざってショーを行なっている。

1995年静岡県出身。埼玉大学にて教育を学びながら、ミュージカルや演劇活動を行う。その後出会ったインプロに教育的価値を感じ、公演制作や俳優のアシスタントとして普及活動を行なっている。