役者がインプロを学ぶ意義とは?〜大塚由祈子さんインタビューVo.1〜

インプロアカデミーでは、定期的に「役者さん向けのインプロワークショップ」を開催しています。役者にとってインプロを学ぶとどんな意義があるのかをお伝えするべく、小劇場界でも活躍されているインプロバイザーの大塚由祈子さんにインタビューをしてきました。聞いていくと、予定していた30分を大きく超えて、インプロを学ぶ価値を教えてくださいました。その内容を複数回に分けてご紹介していきます。

太文字:めろ 黒文字:由祈子さん)

今日はよろしくお願いします!早速ですが、普段はどんな活動をされてるのか教えてもらっていいですか?

「アマヤドリ」という劇団に所属していて、主に脚本のある芝居に出演しています。「セカンドサークル」でインプロをやったり、他の劇団に客演したり、子どもにダンスを教えたりもしていますね。昨年は「サキクサ」という自分の演劇ユニットを旗揚げして一人芝居を上演しました。高校ダンス部・大学舞踊科と学生時代は踊り漬けだったんですが、小川絵梨子さん(現・新国立劇場芸術監督)演出作品に感銘を受けて、『私がやりたいのはダンスじゃなくて芝居だ!』と演劇の道に進み、今に至ります。

~お芝居が『真面目だね』と言われて~

では、由祈子さんがインプロを始めたきっかけはなんだったんですか。

インプロの存在自体は学生時代から知っていて、今井純さんのインプロ関連の書籍なんかも読んでいたので、ずっと興味はあったんですよね。でもインプロ面白そうだなって思いつつも、やっばりやりたいのは脚本のお芝居だしなぁと。

それで、いろいろな舞台のオーディションを受けて脚本のお芝居に出演させていただく中で、ご一緒した演出家さんに『本当に真面目だよね』と(笑) 『気を抜くと、すぐ真面目になるよね』と言われてしまって。

私としては、脚本の筋があって、この役に求められていることはこうだなと思って演じているんですよ。でもそうすると『真面目だね』って言われちゃう。じゃあどうしたら面白くなれるんだろうって、そういう壁にぶち当たったんです。

だからと言って、脚本を無視して「不真面目にやる」わけにはいかないし、きっとこれは「もっと自由に演じる」みたいなことなんだろうなと思って。脚本に眠っている可能性に気づく、自分のセンサーみたいなものをもっと磨かなくちゃと思って、インプロを始めました。

今井純さんのクラスを受けたり、学生時代に脚本のある芝居で共演していた忍翔のワークショップに行ってみたり。それが3、4年前ですかね。

じゃあ、本当に脚本芝居のスキルを上げるために始めたんですね。

そうですね。あとは、シーン中に「これから起こることを予測しちゃう」というのも自分の課題で、「予測せずに、その場にいる」という身体の感覚を得たかったというのもあります。と言っても、インプロを始めたら予測することが全く無くなった!とは、残念ながらならなくて、『さっき予測しちゃってたな私…。』となる本番も、正直あります。

でも以前は、『今のダメだった!』『集中切れた!』『予測しちゃった!』『あー!』みたいな(笑) 頭の中での自分への批判が凄かったんですけど、インプロを始めてから、予測しちゃう自分を許せるようになったというか、『いま予測しちゃったかもねー。』くらいの緩さで、頭がうるさくなくなったなぁと。

ほら、あの、前に忍翔が教えてくれた…

インナーゲーム?(※1)

それだ!

セルフ1、セルフ2の話ですね。(※2)

そうです、セルフ1が減ったのはいい傾向だなと思ってます。

でも「自分を許せる」って言葉を使うと、『適当にやってもいいと思ってんのか?』『インプロすると、本番で失敗してもいいと思っちゃうのかよ?』って誤解を生んでしまうかな…。難しいですね(笑)

とにかく、予測しちゃった自分に『あー!』と気づいて、体を固めてしまうことは無くなりました。予測しちゃうことが無くなったとは言いません。言えません。でも減ったはず!(笑)

~1つの正解ではなく、沢山の可能性を模索する~

他に役者がインプロを学ぶ意義ってどこにあると思いますか?

やっぱり、「コントロールを手放せるようになる」ってことなんじゃないかなと。

台本があると、つい『ココで相手に対してこんなこと思って、ココでこんなリアクションをとって、ココで感情が爆発して…。』みたいに、ずっとハンドルをガッチリ握って、(運転でいう)若葉マーク状態に陥ってしまいがちで。

例えば後ろのめりの片手運転で、ちょっと今日はいつもより大きめに右にカーブしてから左折したなぁ、みたいな。 ちゃんとチェックポイントは通るんだけど、 ポイントとポイントの間の揺れを楽しめるようになったと思います。

若葉マーク状態で、『毎回寸分違わずこの線の上を通るぞ!』ってなってたのが、少しコントロールを手放せるようになった。「完全に」とは言いません。言えません。「少し」です!(笑)

あとは、「稽古場で試す勇気がつく」ことかな。

以前は、稽古の中で良い感じの道筋を一つ見つけたら、 『これでうまくいったから良いんだ!』と、なかなかそこから離れられなくて、それ以外の可能性を模索しに行けなかったんです。

これは日本の学校教育の影響もあるんじゃないかと思うんですけど、正解を見つけようとする習慣が染みついてしまっていて。だからこそ何か正解っぽいモノを見つけられたときに、ついそこから離れがたくなってしまう。

なので、『この道だと辿り着けるんだなー。じゃあ違うルートを通ってみてもいけるのかな?』 と、稽古場で試す勇気を持てるようになったのは、インプロのおかげだと思います。試した結果、失敗したとしても「自分を許せる」ようになったから、なんじゃないかなと。

この前のキースクラスで、忍翔が『インプロは宗教じゃなくて、プロセスだ。旅だ。』と教えてくれて。インプロシアターのダン・オーコナーの言葉だそうですが(笑)

この規律を守れば正しい!とか、グランド・キャニオンに行ったら最強!とかは無くて、 アメリカに行ったらその良さがあるし、 スペインに行ってもその良さがある。

自分がどんな道を通って、どれだけ歩いて、どう旅をしたかが、自分の財産になる、と。

それは脚本のある芝居でも同じだなと思いました。

目的地まで、怒ってたどり着くのか?泣いてからなのか?笑ってたどり着くのか? 『正解はこれだ!』と囚われずに、脚本に眠っている様々なルートの可能性を探っていく、その試行錯誤のプロセス・旅路が、俳優としての財産にきっとなるはずです。

Vo.1 まとめ

脚本芝居をする中でぶつかった、「真面目すぎてしまう」「より自由な発想を持てない」という課題をインプロを通じて少しずつ克服してきているよ!というお話でした。

まだまだ、興味深い話をたくさんしていただいています。ぜひVo.2をお待ちください。

2020年7月末にVol.2も公開しました!

※1 ティモシー・ガルウェイが書いたテニスの指導書。現代のコーチングの基本となっている。
※2 頭の中で命令したり評価したりする声の主を「セルフ1」と名づけ、実際に行動する自身を「セルフ2」とガルウェイが名づけた。

1995年静岡県出身。埼玉大学にて教育を学びながら、ミュージカルや演劇活動を行う。その後出会ったインプロに教育的価値を感じ、公演制作や俳優のアシスタントとして普及活動を行なっている。