スポーリンクラス参加者インタビュー:のりお・ゆっこ「久々に空間と身体を遊ばせた」

インプロアカデミーが開催している各種ワークショップに通う生徒さんに、通ってみての感想をお伺いしていきます。今回は、スポーリンクラスに通うのりおとゆっこ、講師のなつみとりなの4人による座談会形式!2ヶ月間一緒にワークしてきた4人ならではの話をお伺いすることができました!

生徒:ゆ)ゆっこ  の)のりお

講師:な)なつみ  り)りな

生徒2人の簡単な経歴

ゆっこ
千葉県出身。自然溢るる田舎町にて、のびのび育つ。
ICU高校ダンス部、お茶の水女子大学芸術・表現行動学科舞踊教育学コースにて、モダン・コンテンポラリーダンスを学んだのち、卒業後は演劇の世界へ。
培ってきた身体能力を武器に、身体表現を多く用いる演劇作品・映像作品に多数出演し、2019年よりアマヤドリの劇団員となる。同年よりセカンドサークルにも所属し、インプロを探究している。

のりお
岐阜県生まれ。東京在住。横浜の保育園で保育士として勤務。
インプロ、親子のための演劇、劇遊び、親子の遊びワークショップなどを随時行っています。
「m-o-ments」というユニットで月に一回にインプロショーを行っています。都内中心ですが、出張公演、イベント参加などもしています。

スポーリンクラスに参加してくれた訳を教えて!

な)今日は集まってくれてありがとう!早速本題なんだけど、まずどうしてスポーリンクラスを受けようと思ったのか聞いてみたくて。

ゆ)私は、今まで(インプロっていうと)キースしか聞いたことがなくて。でも、子どもにインプロとか、ダンスとかも教えている中で、より子どもの可能性を広げられるような、インプロの視点を得られたらいいなと思って受けたかな。

の)僕もゆっこと似ていて、インプロを学ぶ時にごちゃ混ぜに習っていたと思う。ワークショップによっても大切にしている部分が違うし。そんな中で、ストテラWSを受けて「その人のことについて知る」って面白いなって思ったんだよね。
そんな時にスポーリンのワークがあって、教育的なことをやっていた人だということも感覚的にわかっていたから、彼女のことについてちゃんと最初から教われるのは面白いかなって思ってやってみた感じ。

ゆ)6月に無料単発ワークをやってくれてたじゃない?そこで、スポーリンってすごく教育的なんだということがわかったんだよね。

な)どこでそれを感じたの?

ゆ)サイドコーチとか!私自身、言葉かけってすごく大切だと思っているのだけど、「どう声かけをするといいか(またはあえてしない方がいいか)」という点へのガイドがあるところが教育的に感じたんですよね。

な)じゃあ受けた理由は2つ。いろんなインプロを学んでみたいということと、2人とも子どもと関わっているからその活動に活きるんじゃないかと思ってきてくれたってことだね。

スポーリンの魅力ってどんなところ?

な)2人ともキースのストテラWSとかも受けてるし、スポーリンも受けてくれてるじゃない?2つを受けた上で、スポーリンの魅力ってなんだと思う?

ゆ)スポーリンは、感覚が開く、広がる感じがある。キース、特にストテラWSでは「ストーリーを止めるテクニック」を中心にやっていたので、どちらかというとロジカルな感じ。それと比べると感覚的だと思う。

インプロで「どうしよう」って困った時に、今自分がシーンでいる場所とか、見えるものを感じたりすることで貰えるものがたくさんあるんだけど、スポーリンのシアターゲームはその感覚を呼び覚ますみたいな感じだった。そういう意味で「インプロ的に助けられる」って感じ。

な)「感覚が開く、広がる」って言ってくれたけど、それは気持ち的に開かれた感じになるのかどっちだろう。

ゆ)感覚的にかな。身体的に刺激されて開かれていく感じがする。
 
な)五感を使うワークとか、体の一部だけでやってみるワークとかもあるから、体が「はっ!」って開く感じあるかもしれないね。のりおはどう?

の)僕は、スポーリンはキースとある意味真逆だなと思っていて。キースは自由のことを知るために、自分が自由ではないことを意識させられるなって思う。「こうやるとできない」「ここができなかった」っていう。それもOKにするんだけど、できないことで気づくことがすごくある(という考えな)のに対して、スポーリンは「誰でも自由なんだよ」ってことを言ってる気がする。

だから、最初にやるときは、とても心地よくできる気がする。「できる楽しさ」「誰でも楽しいんだな」ってところから入れるから。だから子どもとやるのに向いているんだなと思う。「どういう風に見えた」とか「どう感じた」とかはそれぞれ全員持っていることだから、誰でもできること。それを敏感に意識すればするほど楽しくなるんだろうなって感じがしました。

ゆ)自分が想像したものを相手に当ててもらうことで、自分が想像したものを肯定してもらえたというか、自己肯定感にも繋がるのかなみたいなことも思ったかな。

な)この前講師陣でも話したんだけど、スポーリンの方が表現することと受け取ることがダイレクトだよねって思ったことを思い出した。

り)スポーリンには失敗っていう概念がないって話もしたよね。

な)そう!キースはよく失敗の話をするけどスポーリンはあんまり言わないよねって話になったんだよね。

このクラスで印象に残っていることは何?

な)このクラスで印象に残っていることって何かある?

ゆ)私は「空間を歩いていく、スペースサブスタンスを感じる」(※1)やつ。ワークをやっていく中で空間に自分が動かされていくみたいなやつ。あれは〜久々に良かったな〜。コロナのせいもあると思うんだけど、久々に空間と身体を遊ばせた体験をして、すごく楽しかった。「あ〜久しくこれやってませんでした〜!」みたいな。

みんな)笑い

ゆ)やっぱりオフラインだと、稽古場に行って「今日は広いな〜」とか「こんなところか〜」って歩きながら感じてたりするんだけど、オンラインだと「はい(パソコンの画面ぽち)」ってやって「はい(カメラ前で参加)」ってして、しかも部屋だったから、改めて空間っていう物に新鮮に歩いてみるってことをやって、「空間の感覚がめちゃくちゃ鈍感になってたな」って(気付いた)

ワークを進めてたらいろんなものが見つかって、例えば肩に鳥が乗ってきたりとか。空間と自分という存在があるだけで、これだけ想像が膨らむし遊べるんだなということを改めて気付かされたな。

な)自分の部屋でも空間を感じられたの?

ゆ)うん。むしろ自分の部屋のサブスタンスとの出会いが新鮮!「ここはドロっとした感じがしたな」とか、「ここはさらっとしてるな」とか。歩いてて触れているものをどう感じるかみたいなことが新鮮だから、そのまま空間も新鮮になってきた。そこをどう歩くか。縦に歩くのか横に歩くのかでつく足跡?人跡?軌跡みたいなものが変わるじゃない?それも空間が全然違う感じ。自分の部屋にいながら迷路ができるみたいな感覚だった。

な)のりおは印象に残ったことある?

の)僕も空間なんだけど、一番いいなと思ったのが、「見る見られる」「触る触られる」ワーク。その中で、「空間に見られるのを拒否して」って時と「認めてあげて」っていう2つやったんだけど、認めてあげた時に空間とすごく繋がった感覚があった。周りのものが愛おしいというか大切なものだなっていう感覚を持てたんだよね。

このワークにハマって、通勤中とかに「今、見てる見られてる?」なんてやったりしたんだけど、その物がすごく近い物として繋がって見える感覚があって、「日常でこれだけ遊べるんだ」と思えたことがすごく楽しかった。

演劇仲間や保育士仲間に伝えたいことは?

な)ゆっこは俳優を、のりおは保育士をそれぞれやっていると思うんだけど、スポーリンのワークの中で、仲間に伝えたいなって思ったことがあれば聞いてみたかったの。

ゆ)最初の方にも話したけど、内にこもらないとか、外に開くっていうのは演劇でも全く同じことが言える。「次のセリフなんだっけ」とか「失敗しないか不安だ」みたいな状態で舞台上にいると集中が切れるというか、ふっと(意識が違うところに)行っちゃう時がある。

例えば客席で「ガシャン」て音がした時とかに「はっ!」ってなって「プツン」と切れちゃったり「どうしよう」「次のセリフってなんだっけ」ってなると内にこもっちゃう。でも、「あー客席から音したな。さて、相手はどんな顔してるかな」という感じで外に開くことができると、またシーンに戻れるんだよね。

だから、「外に開くっていう感覚を得ることができる」っていうのは、演劇仲間に伝えたいなと思う。

な)その外に開くっていう感覚を持てたのは、どのワークだったかは覚えてる?

ゆ)ここまで話した空間の話もそうだし、人のことをどれだけ見るかというのも、ひとつの修行?というか稽古みたいになったなと思う。例えば、相手が何を考えているかのワークとかは、相手がしゃべっていなくても感じ取ることができる。

普段の生活とかはしゃべっちゃうから。「今日元気?」「うん、元気元気」って返ってきたら「あぁ、この人は元気なんだね。わかった」みたいに、言葉に頼って判断しちゃうことがある。その方が楽だしね。でもそうじゃなくて、本当に何もしゃべってない人をじっくり見ることでこれだけ感じられるんだとか、沈黙の会話とかも、表情の変化でこれだけコミュニケーションが取れるんだってことを改めて感じられたかな。

な)ゆっこの話を聞いて、スポーリンが移民とか貧困層の子どもたちとやったところからスタートしているということにも繋がってるなって発見した。
言葉が分からなかったり、通じなかったりする子どもたちに対しても、相手が何を考えているのか分かったりするってことだもんね!

の)実は保育園の年長さんに対して、スポーリンのワークをやったりしてて。その中で音のワークとかはすごく楽しんでたんだよね。そこから「静かに話を聞けるんだ」(という発見になったり)「どんな音が聞こえたの?」と聞くと、なんの音か想像して「これだ」と答えてくれる子もいれば、「こんな風に聞こえた」っていう子もいたり千差万別で。でも、「人それぞれでいいんだね」っていうとみんな納得して聞いてくれるのがすごく面白い。

スポーリンのワークでは、それぞれ目的とかフォーカスを指定してくれているけど、子どもとやるときはその通りにいかないこともあるのよ。

スリーチェンジ(※2)をやった時、始めは変えていくことを楽しんでたんだけど、だんだん競争になってきたんだよね。「いえーい!俺の(変化)は当てられなかったぜ〜」みたいな感じで。だから、途中で少し変えて、絶対当てられる簡単なやつ・絶対当てられない難しいやつ・後は好きなように変えてみてとしたら、結構楽しんでやってくれた。

そこで今思っているのは、もし保護者とか保育士の方がシアターゲームを教えるときは、ルールとか勝ち負けを気にせずに伸び伸びと楽しめるゲームとして教えてあげたいなって気がしているかな。正しい正しくないじゃなく勝ち負けもなくても、これだけ楽しめるんだよって。

参加して良かったことベスト3を教えて!

な)最後に、このシアターゲームのクラスに通って良かったことベスト3を聞きたいんだけどいいかな?

の)まず、
①子どもと楽しめるシアターゲームをたくさん教わることができた。
②自分が日常の中で感性、感覚を養うようなことができるようになった。
③夏実と会うことができた。

な)いえーい!!私ものりおとしっかり関わることができた。

ゆ)3つにまとめるって難しいな。でも見切り発車で行くね。
①感覚が敏感になった。
②空間や相手からいろいろもらえることに気付けた。
③相手や空間から影響をもらいながらシーンを作ることを楽しめたこと。

な)ナイススリー!

ゆ)もっといい3つ出た気がする笑。

※1Space Walk(スペースウォーク)。
全身で空間を感じながら歩く。その時、まるで海水が海の生き物を取り囲んで支えているように、自分を空間を満たす物質(space substance/スペースサブスタンスと呼ばれる)が取り囲み、支えていることを感じながら歩いてみる。
※2Three Changes(3つの変化)。
2人1組になり、お互いに相手の服装や髪型をよく観察する。その後、背中合わせになり自分の服装や髪型のどこか3つを変える(例:袖をまくる、髪の分け目を変えるなど)。準備ができたら向き合い、相手のどこが変わったかを当てるゲーム。子ども達と遊ぶゲームの鉄板。

最後に。座談会後の感想

1番の感想はとてもいい座談会ができたなということ!役者であるゆっこと保育士であるのりお。2人ならではの演劇・教育の視点からスポーリンやシアターゲームについて聞くことができました。

私は、「感覚に敏感になる」「繋がる」というワードに対して「役者のトレーニング」「芝居がうまくなるにために」の文脈でだけ受け取っていました。もちろん間違いではないですが、のりおの「日常がこんなに楽しくなることを発見した」という言葉で、自分の感覚を感じることや体感することは、本来楽しいものだったんだと思いました。ゲームがなくても、お金がなくても、自分の身体ひとつあればいくらでも遊べる。そしてその感覚を持ってインプロすると、もっと自由に楽しくその場に生きることができるのかもしれないなと思います。

「ヴァイオラ・スポーリンのシアターゲーム」クラスの詳細はこちら

ゲイリー・シュワルツのシアターゲームクラスの詳細はこちら

「シアターゲームからはじめるショートシーン」ワークショップの詳細はこちら

大学にてミュージカルや演劇活動をスタート。会社員時代に出会ったインプロに教育的価値を感じ、独立後、個人で活動しているインプロバイザー(パフォーマー・芸術家)を支援する活動をしながら、インプロ団体の経営に参画。
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